株式会社Crowd Moove
経理

記帳代行とは?任せられる業務と税理士法の線引き、依頼先の選び方

記帳代行に任せられるのは仕訳入力と帳簿作成までで、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占業務です。税理士法の条文で頼める業務と頼めない業務を切り分け、依頼先4類型の選び方と依頼前に決めておく5項目を解説します。

記帳代行を調べ始めた段階でつまずくのは、「どこまでを外に出せるのか」がサービスごとに違う点です。

仕訳入力だけを指す会社もあれば、請求・支払まで含めて記帳代行と呼ぶ会社もあり、法令上の定義区分は存在しません。

結論から言うと、記帳代行に任せられるのは仕訳入力と帳簿作成までで、申告書の作成や税務相談は税理士しか受けられません。

本記事では、記帳代行に任せられる業務と税理士でないと受けられない業務を、税理士法の条文に沿って切り分けました。

累計100社以上のバックオフィス支援で立ち上げに立ち会ってきた立場から、依頼先4類型の選び方と、依頼前に社内で決めておくべき5項目まで扱います。

自社が外に出せる範囲の線を自分で引き、依頼先の類型を1つに絞れます。

執筆者 信濃拓実|株式会社Crowd Moove 代表取締役

累計100社以上・5万時間超のバックオフィス支援実績を持つBPO事業の責任者。業務代行にとどまらず、業務フロー改善・AI活用サポートまでを一貫して提供している。

X(旧Twitter) / Facebook / LinkedIn

※ 支援実績の詳細はこちらをご覧ください。

監修者 小峰正仁|株式会社ブルーム 代表取締役(元 株式会社メンバーズ 取締役CFO)

バックオフィス部門の責任者として、未上場ベンチャーから東証一部上場企業への成長を22年間牽引。現在はベンチャー企業のバックオフィス戦略アドバイザーを務める。

株式会社ブルーム 公式サイト

記帳代行とは?どこまでの業務を任せられるのか

記帳代行とは、領収書や請求書などの証憑(しょうひょう:取引の証拠になる書類)をもとに仕訳を入力し、会計帳簿を作成する業務を外部に委託するサービスです。

決算書の作成や税務申告は原則として含まれません。

外に出せるのは、処理の手順が決まっている作業です。

勘定科目の判断基準を決める、支払の可否を判断するといった意思決定は社内に残ります。

記帳代行と経理代行と税理士顧問が担当する業務範囲の違いを整理した比較表
図1|記帳代行・経理代行・税理士顧問の業務範囲

記帳代行に任せられる業務の一覧

記帳代行の中心は、証憑の受け取りから帳簿作成までの一連の処理です。

どこまでを基本料金に含めるかは事業者ごとに違うため、見積の段階で範囲を確認してください。

業務

基本料金に含まれやすいか

通帳・カード明細からの仕訳入力

含まれる

領収書・請求書の仕訳入力

含まれる

総勘定元帳・仕訳帳の作成

含まれる

証憑のスキャン・データ化

別料金になりやすい

月次残高の確認・報告

事業者による

勘定科目のルール設計

初期対応として別枠

※当社支援実績および各社公式料金をもとに作成

範囲がぶれやすいのは、証憑のデータ化と月次報告の2つです。

紙の領収書を送るだけで済むと考えていると、スキャン費用が後から乗ることになります。

もう一段ぶれるのが、勘定科目のルール設計です。

既存の帳簿がある会社なら過去の処理を踏襲できますが、創業間もない会社では科目の体系そのものを作る必要があります。

初期設計を委託先に任せるか社内で決めるかで、初月の立ち上がりが変わります。

経理代行・税理士顧問との違いは?

記帳代行と経理代行に法令上の定義区分はありません。

各社のサービス紹介を見比べても、範囲の説明は会社ごとにばらつきます。

実務上は、社内に残る業務量で線を引きます。

記帳だけを出すのか、請求・支払まで含めて出すのかで、選ぶサービスが変わります。

観点

記帳代行

経理代行

税理士顧問

中心となる業務

仕訳入力・帳簿作成

経理業務全般

税務申告・税務相談

お金の動きへの関与

記録のみ

請求・支払も担う

記録には関与しない

決算・申告

対象外

対象外

対応

向くケース

記帳だけが重い

経理担当が不在

申告まで任せたい

※当社支援実績および各社公式料金をもとに作成

記帳代行は違法ではない?税理士法で決まっている線引き

記帳そのものは税理士の独占業務ではないため、税理士以外の事業者に依頼しても違法ではありません。

違法になるのは、税務代理・税務書類の作成・税務相談を無資格者が報酬を得て行った場合です。

税理士法第2条は、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つを税理士の業務と定めています。

さらに第52条により、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことは制限されています(税理士法 / e-Gov法令検索、2026年9月4日取得)。

つまり論点は「違法かどうか」ではなく「どこまでを頼んでいるか」に置き換わります。

記帳代行会社に決算や申告の相談まで期待すると、受けられない業務を求めることになります。

実務で問題が起きやすいのは、日々の仕訳で税務判断が必要になる場面です。

交際費と会議費の区分、資産計上と一括経費の判断、インボイスの登録有無による仕入税額控除の扱いなどが該当します。

記帳代行会社は「一般的にはこう処理されることが多い」という情報提供までしかできず、個別の税務判断は税理士の領域になります。

したがって、税理士と契約していない会社が記帳代行だけを使う場合は、判断が必要な取引をどう扱うかを先に決めておく必要があります。

判断を保留したまま仕訳が積み上がると、決算時にまとめて手戻りが発生します。

記帳代行会社に依頼できる業務と税理士でないとできない業務を根拠条文とともに整理した表
図2|記帳代行会社に頼める業務・頼めない業務

なお、記帳の義務そのものは事業者側に残ります。

白色申告であっても、不動産所得・事業所得・山林所得のある方は帳簿への記載義務があり、法定帳簿の保存期間は7年間です(No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度 / 国税庁、2026年9月4日取得)。

💡 押さえておきたいポイント

記帳代行に出しても、帳簿の保存義務と内容の責任は依頼した事業者側に残ります。委託先の選定では、記録の受け渡し方法と保存の所在を必ず確認してください。

記帳代行の依頼先は4つ|自社はどこに頼むべきか

依頼先は税理士・記帳代行専門会社・BPOやオンラインアシスタント・フリーランスの4つです。

決算や申告まで一括で任せたいかと、社内に経理担当が残るかどうかで選ぶ先が変わります。

依頼先

決算・申告

記帳以外の事務

向くケース

税理士

対応可

対象外

申告まで一括で任せたい

記帳代行専門会社

対象外

対象外

仕訳数が読めて記帳だけ重い

BPO・オンラインアシスタント

対象外

対応可

経理以外の事務も出したい

フリーランス

対象外

応相談

費用を最優先する

※当社支援実績および各社公式料金をもとに作成

判断の分かれ目は、記帳の前後にある作業を誰が担うかです。

証憑の回収や立替精算の取りまとめが社内に残ると、記帳だけを外に出しても負担はあまり減りません。

税理士に依頼する利点は、記帳から申告までが一本の線でつながる点にあります。

一方で、記帳以外の事務は範囲外になるため、請求書発行や立替精算の負担は社内に残ります。

記帳代行専門会社は、仕訳数が読める会社ほど単価が効きます。

BPOやオンラインアシスタントは時間単価が中心で、月ごとの業務量の変動を吸収できます。

決算対応の要否や記帳以外の事務量から記帳代行の依頼先を選ぶ判断フロー図
図3|記帳代行の依頼先を1つに絞る判断フロー
PDF
無料ガイド

経理代行まるわかりガイド

はじめての外注でも失敗しないための、経理代行の基礎知識・費用・選び方・導入ステップを1冊にまとめました。中小企業の経営者・管理部門向け。

無料でダウンロードPDF / 全24ページ / 経理代行の入門

記帳代行の費用相場はいくらか

記帳代行の相場は、料金を公開している3社で比べると、月間100仕訳で月5,000〜17,500円、300仕訳で月15,000〜48,000円です。

決算や申告は別料金になるため、年額で見ないと総額を見誤ります。

月間仕訳数

月額の目安

〜100件

¥5,000〜17,500

〜200件

¥10,000〜33,000

〜300件

¥15,000〜48,000

※当社支援実績および各社公式料金をもとに作成(日本橋記帳・経理代行サービス 料金表/TOTAL経理代行センター 料金表/大阪経理代行応援団.com ご利用料金、2026年10月14日取得)

依頼先別の相場や、見積が上振れする条件については記帳代行の相場を解説した記事で詳しく扱っています。

経理業務全体を外に出す場合の費用感は、経理代行の費用相場の記事を参照してください。

記帳代行を使うメリットは何か

記帳代行の効果は、経理担当者の作業時間が空くことよりも、経営者や現場が担っていた細切れの事務作業がなくなる点に出ます。

属人化していた処理が外部の手順に載るため、担当者の不在時にも止まりません。

不動産・Webメディア運営を手がける株式会社Lifeplay(6〜10名規模)では、代表が月10〜20時間を費やしていた事務作業がゼロになりました(株式会社Lifeplay様の事例)。

経営者が本来時間を使うべき業務にリソースを集中できる状態に変わっています。

Lifeplay様では、正社員を採用した場合と比べてコストも約1/4〜1/5に抑えています。

Crowd Mooveの経理代行サービスは稼働時間で費用が決まるため、件数が増減しても体制を組み直す必要がありません。

記帳を外に出すと、経理の作業そのものより「経理に付随する細切れの確認」が減ります。

領収書がどこにあるか探す、支払期日を思い出す、月末に慌てて入力するといった動作が、決められた手順に置き換わるためです。

もう1つの効果は、帳簿が毎月同じ形で締まることにあります。

数字の比較ができる状態が続けば、売上に対する原価の動きや固定費の増減を月次で追えます。

📊 支援実績の数値

代表の事務作業:月10〜20時間 → ゼロ/コスト:正社員を採用した場合の約1/4〜1/5(株式会社Lifeplay)

記帳代行のデメリットと、向かないのはどんな会社か

記帳代行では税務相談を受けられず、証憑の受け渡しに手間が残ります。

仕訳数が少なく社内で完結できる会社や、月中に判断が頻発する会社は、外注しないほうが早く安く済みます。

見落とされやすいデメリットは、社内から帳簿の作り方を知る人がいなくなる点です。

数字の意味を説明できる人が不在になると、金融機関との折衝や投資判断の場面で困ります。

月次の報告をどの粒度で受け取るかは、契約時に決めておいてください。

外注が合わないケースは、次の3つに整理できます。

  • 月間仕訳数が30件を下回り、会計ソフトの自動連携でほぼ処理が終わる
  • 領収書が紙で分散しており、整理して送る工数のほうが記帳より重い
  • 勘定科目の判断が月中に頻発し、そのつど社内で決める必要がある

上記に当てはまる場合は、外注より先に証憑の受け取り方を電子に寄せるほうが効果的です。

電子帳簿保存法には「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの制度区分があります(電子帳簿保存法関係 / 国税庁、2026年9月4日取得)。

証憑の受け渡し形式は、記帳代行の見積にも運用にも直結します。

⚠️ 委託先に確認したい体制

記帳代行では通帳明細や取引先情報を外部に渡します。Crowd Mooveでは、ISMSを基準に置いた独自のセキュリティ研修・テストとNDA(秘密保持契約)の締結を実施しています。

記帳代行を依頼する前に社内で準備しておくものは?

準備が要るのは、証憑の形式と受け渡し方法・月次締めの期限・会計ソフトの権限・勘定科目の運用ルール・質問の窓口の5つです。

5項目が決まっていないと、初月の締めが回りません。

準備項目

決めておくこと

証憑の形式

紙かデータか、共有ドライブかメールか

月次締めの期限

何営業日目までに帳簿を締めるか

会計ソフトの権限

閲覧のみか、入力権限まで渡すか

勘定科目のルール

判断に迷う取引の扱いを誰が決めるか

質問の窓口

委託先からの確認を誰が受けるか

※当社支援実績をもとに作成

とくに詰まりやすいのは、勘定科目のルールと質問の窓口です。

委託先は判断ができないため、確認が滞ると帳簿が止まります。

PDF
無料ガイド

経理代行まるわかりガイド

はじめての外注でも失敗しないための、経理代行の基礎知識・費用・選び方・導入ステップを1冊にまとめました。中小企業の経営者・管理部門向け。

無料でダウンロードPDF / 全24ページ / 経理代行の入門

記帳代行の依頼から運用が回りはじめるまでの流れは?

問い合わせから初回の月次締めが回るまでは、通常1〜2か月かかります。

契約前の業務棚卸しと、初月の並走期間を見込んでおかないとスケジュールが崩れます。

段階

目安期間

主な作業

問い合わせ・ヒアリング

1〜2週間

仕訳数と証憑の状態を確認

見積・契約

1〜2週間

範囲の確定とNDA締結

初期設定

1〜2週間

会計ソフト権限・科目ルールの設計

初月の並走

1か月

実際の締めを一緒に回す

※当社支援実績をもとに作成

決算期の直前に着手すると、初月の並走が決算作業と重なります。

移管は決算月から2か月以上離して始めてください。

記帳代行についてよくある質問

依頼を検討する段階で繰り返し聞かれる疑問を、法令の線引きと実務の2軸でまとめます。

税務相談の可否と、証憑の保存義務が誰に残るかは、契約前に確認してください。

記帳代行に決算や確定申告まで頼めますか?

頼めません。

税務書類の作成と税務代理は税理士の独占業務のためです。

決算まで一括で任せたい場合は、税理士または税理士法人が選択肢になります。

記帳代行に頼むと帳簿の保存義務はなくなりますか?

なくなりません。

帳簿の保存義務と記載内容の責任は、依頼した事業者側に残ります。

委託先から納品された帳簿データをどこに保存するかは、契約時に決めておいてください。

紙の領収書しかない場合でも依頼できますか?

依頼できます。

ただしスキャンやデータ化が別料金になる事業者が多く、月額が上がる要因になります。

受け取り方をデータに寄せてから依頼すると、費用を抑えられます。

会計ソフトを使っていない場合はどうなりますか?

委託先が指定するソフトで新規に立ち上げます。

freeeやマネーフォワード クラウドなど、対応ソフトは事業者ごとに異なります。

記帳代行を自社のバックオフィス設計に組み込む

記帳代行に任せられるのは仕訳入力と帳簿作成までで、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占業務になります。

線を引くのは価格ではなく税理士法のため、依頼先を選ぶ前に「どこまでを外に出すか」を先に決めてください。

依頼先は、決算対応の要否と記帳以外の事務量で4類型から絞れます。

着手前に証憑の形式・締め日・ソフト権限・科目ルール・質問窓口の5項目を決めておけば、初月から運用が回ります。

Crowd Mooveは累計100社以上・5万時間超のバックオフィス支援を通じて、経理・労務・総務を横断した業務移管を支援しています。

記帳の切り出し方から相談いただけますので、範囲の設計段階からお声がけください。

最終更新日: 2026-10-16

執筆: 信濃拓実(株式会社Crowd Moove 代表取締役)

監修: 小峰正仁(株式会社ブルーム 代表取締役)