採用ミスマッチによる早期離職に多い理由とは|原因や起こりやすい項目や対策方法について徹底解説
- 2024.08.31 採用・育成
更新日:2024.08.31
採用ブランディングとは、企業が採用市場で自社の魅力を高め、求職者に選ばれる企業となるための戦略的な取り組みです。この活動の中心は、「職場」としての自社をブランディングすることにあります。
具体的には、求職者に「この企業で働きたい」と思わせるために、企業の理念やビジョン、独自の社風、働きやすさ、キャリア形成のサポート、福利厚生、成長機会など、入社することで得られる具体的なメリットを明確に伝えます。
本記事では、採用ブランディングで期待できる成果や成功事例を紹介します。
採用ブランディングが求められる背景としては、以下のことが挙げられます。
日本では少子化が進行しており、それに伴い労働力人口が減少しています。その結果、企業が採用できる人材の数が減少し、企業間の人材獲得競争が激化する「売り手市場」となっています。
特に、優秀な人材を確保するためには、企業側が求職者にとって魅力的な雇用環境を提供し、自社のブランド力を強化する必要が出てきています。求職者が複数のオファーから選べる状況では、企業が選ばれるためには、単に給与や福利厚生だけでなく、企業文化や働きやすさ、キャリア成長の機会など、包括的な魅力をアピールすることが求められます。
近年、転職市場においては、積極的に転職活動をしていない「転職潜在層」の存在が注目されています。これらの人々は、現在の職場にある程度の満足を感じつつも、より良い環境があれば転職を考える可能性があります。
こうした層にアプローチするためには、企業が持つ「働く場」としての魅力を戦略的に伝えることが重要です。採用ブランディングによって、企業のビジョンや価値観、職場の雰囲気、成長機会などを魅力的に伝えることで、転職を検討していない層にも「この企業でなら働いてみたい」と感じてもらい、潜在的な転職候補者を惹きつけることが可能になります。
採用ブランディングを始めるにあたり、どの媒体で行うかが重要になります。採用ブランディングに適している発信方法を以下に紹介します。
発信方法 | メリット | デメリット |
自社の採用ページ | ・自分たちのペースで更新でき るため、コントロール性が高い ・一貫性のあるメッセージを発 信しやすく、ブランド力を強化 できる ・自社独自のデザインやコンテ ンツを自由に設定できる | ・ページへのトラフィックを集 めることが難しく、SEO対策や 広告の活用が必要 ・継続的な更新や改善のコスト やリソースが必要 |
SNS | ・幅広い層の目につきやすい ・コメントやDMの活用で、求 職者と直接コミュニケーション を図れる | ・常に新しいコンテンツを発信 し続けなければいけない ・ネガティブなコメントへの対 応などの管理が難しい |
企業説明会 | ・求職者と直接対話できる ・対面での説明により、企業へ の信頼感や高感度を高めやすい ・求職者の反応を直接感じ取る ことができる | ・会場の手配や資料作成、運営 にコストがかかる ・地域や日程が限られてしま い、参加者の参加が難しい場合 がある |
セミナー | ・特定の分野に特化すること で、企業の専門性や強みをアピ ールできる ・本当にそのテーマに興味があ る求職者が集まりやすい ・長期的な採用候補者としての 接点を持てる | ・特定のテーマに興味がある人 しか参加しないため、幅広い層 にアプローチすることが難しい ・開催にあたって資料作成など の準備が必要 |
コマーシャル | ・テレビやネットワーク広告を 活用し、大規模な認知度向上が 期待できる ・視覚的、感覚的に企業のイメ ージを強力に伝えられる | ・広告制作費や媒体費用が非常 に高額になる ・持続的な関心を惹くことが難 しい |
インターンシップ | ・学生に実際の業務や企業文化 を触れさせることができ、魅力 を伝えやすい ・将来的に優秀な人材を見極 め、採用につなげやすい | ・インターンシップの計画 ・実行にコストと時間がかかる ・インターン生が必ず採用につ ながるわけではない |
自社の採用ページでは、FAQ、問い合わせフォームなど詳細な情報を提供することができます。自社のタイミングで更新ができ、新規プロジェクトを迅速に反映させることができます。また、他社に依存することがないので、自社の方針と価値観で、内容を決定できます。
しかし、アクセスの誘導が難しく、SEO対策などの施策が必要になります。また、定期的に最新情報に更新する必要があります。
SNSでの情報発信は、短期間で広範囲に拡散されやすいです。また、イベントなどの最新情報を即時に伝えることができたり、リアルな企業の雰囲気を伝えることができます。
しかし、炎上リスクが他媒体よりも多く、不適切な発言や投稿が瞬時に拡散される可能性があります。また、情報が埋もれやすいため、最新のトレンドを敏感に察知し、継続的な投稿が必要です。
企業と求職者が直接交流することができ、信頼関係を築くことができます。その場で、質問の時間を設けることで、参加者に合わせた質疑応答が可能で、双方向のコミュニケーションをとることができます。
しかし、開催にあたっての資料作成などの準備、運営するための時間やコストがかかります。また、日時や場所が限定されるため、参加者が制限されてしまいます。定期的なオンラインでの開催などの対策をしましょう。
特定のテーマに特化することで、専門的な知識や自社のノウハウや強みをアピールすることができます。また、参加者はそのテーマに興味を持っているため、将来的な採用候補者となります。
しかし、内容の準備や講師の手配が必要となり、開催に手間がかかります。また、興味のある人のみが参加するため、広く認知させることが難しいです。
企業の認知度を高めることに関しては、最も適している媒体です。マスメディアを通じて、広く認知させることができます。また、ブランドイメージを確立しやすいこともメリットです。
しかし、制作や放映に多額の費用がかかります。また、情報提供が一方通行であり、コミュニケーションをとることはできません。
インターンシップを行うことで、求職者が実際に業務を体験することができ、職場の雰囲気や企業文化など企業の理解を深めることができます。実務経験を通すことで、採用後のミスマッチを減らすことができます。
プログラムの運営にリソースがかかることがデメリットであり、また、採用候補者を見つけようと考えている場合、短期間で参加者の適正を見抜かなければなりません。
採用ブランディングを行うことで期待できる成果について以下に解説します。
SNS、オンライン広告、企業説明会などの活動を通して、企業の名前、価値観、業務内容を広めることができます。
SNSやオンライン広告は、転職潜在層にアプローチすることができます。企業認知度が高まることで、就職先候補、転職先候補となる可能性が高まります。
例えば、webサイトの採用ページに応募要件・福利厚生などの情報を載せたり、求人広告に出すなど、やれることはやっているけれど、認知度が低く、応募が来ないという悩みを抱えている中小企業が多いと思います。しかし、求人広告はほとんどの企業が行っている手法であり、採用ブランディングではありません。SNSやブログなどの多様なメディアを活用しましょう。
採用ブランディングが成功すると、企業文化の理解や共感を促進することができます。
採用ブランディングがうまくいっていない場合、求める人材や具体的な仕事がわかりづらく浅く広い母集団が形成されてしまいます。事前の理念共感や理解がたかまり、自社とマッチした人材が集まりやすくなります。
自社とマッチした人材が集まることで、採用プロセスの初期段階での選考がスムーズになります。また、採用担当者の負担を軽減することができ、採用効率が向上します。
インターンシッププログラムを通じて実際に働く環境を体験させ、自社にフィットするかどうかを確認する機会を提供しましょう。ミスマッチを減らすことができると、入社後のギャップを抑えることができ、早期離職率の低下にもつながります。
採用ブランディングが成功すると、競合他社と差別化を図ることができます。 他社にはない独自の企業文化や働き方、福利厚生などを強調しましょう。
他社との差別化は、企業の認知度を高めることにもつながるため、求職者にとって魅力的な企業としての印象を植え付け、競合と比べて選ばれる企業となります。
採用ブランディングには、様々な媒体で行うことができます。以下では、媒体ごとに採用ブランディングが成功した事例を紹介します。
日本マクドナルド株式会社は、誰もが知る有名企業ですが、商品の宣伝だけでなく、クルーの募集についても情報発信をして、採用ブランディングに努めています。
店舗で働くクルーを主役と考え、経営陣や本社を「クルーを支える立場」として位置付けています。採用ページでは、「採用に関するFAQ」だけでなく、「社員の声」や「教育プロセス」などの記載があり、充実した内容になっています。
また、応募サイトでは、電話応募を案内するポップアップの表示など、安心して応募できるサイトづくりを目指しています。
参考:日本マクドナルド株式会社「McDonald’s Recruiting Site」
株式会社グローバル・リンク・マネジメントは、不動産投資業界においてブラックなイメージが強く、採用活動が困難な状況にありました。説明会には応募者が集まらず、無断キャンセルも多発し、毎年わずか5名の採用を達成するにも苦労していました。
そこで、同社は採用のターゲット層を「経営に興味がある人」や「成長意欲の高い人」に絞り、キャッチフレーズを「人生は投資だ」に変更しました。また、同社の強みである「人」、すなわち上司や先輩、経営陣などの魅力を強調し、良好な社内の雰囲気をアピールする戦略にシフトしました。
全国や海外にホテルや飲食店を展開する株式会社ベッセルは、これまで地元の私立大学を中心に採用活動を行っていました。しかし、全国に事業を展開する中で、「福山から出たくない」という理由で内定を辞退する学生が多いという課題に直面していました。
そこで、同社はターゲットを地元出身で全国の大学に通う学生に変更しました。ターゲット層を「地元の福山に貢献したい気持ちを持ちつつ、グローバルに活躍したい学生」と設定し、採用スローガンを「福山は、世界だ」に決定しました。
この新しいアプローチの結果、首都圏や関西圏の大学に進学した地元出身の学生からの応募が増加しました。採用活動を始める前は内定者が6〜7名だったのが、25〜28名に増加し、約4倍の成果を上げることができました。
参考:採用ブランディングとは?方法やメリット、成功事例、費用相場を解説
このように、採用ターゲットやキャッチフレーズを改善することで、採用ブランディングに成功している企業があります。
株式会社SmartHRは、Wantedlyを活用した採用ブランディングによって1年で約3,700人のタレントプール形成に成功しました。
発信コンテンツは、代表・社員のブログや、オープン社内報、外部のインタビュー記事など多面的。実際に働いているメンバーの人柄や雰囲気を感じとってもらうためのイベントを開催しました。
Wantedlyでは、「給与」「福利厚生」などの採用条件の企業の魅力を詳細に発信し、企業への想いや方向性に対して共感する求職者を募集するスカウトサービスであり、採用のミスマッチが減ります。
株式会社NTTデータは、製造業、流通業、サービス業などの部門で、エンジニアに対して技術力やブランド力が十分に伝わっていないという課題を抱えていました。競合他社が強力であるため、同社は転職を考えていない潜在的な求職者層をターゲットに、2021年から採用ブランディングを開始しました。
具体的な施策として、GoogleやInstagramに採用広告を出稿し、採用用のランディングページ(LP)を構築し、YouTubeで社員のインタビュー動画を配信しました。初年度の応募数は前年とほぼ変わりませんでしたが、1年後には増加し、募集職種の経験者採用数は以前の2倍に増えました。さらに、応募数の増加だけでなく、新入社員のアンケートでも、「採用LPやYouTube動画を見て期待が高まった」という声が寄せられました。
成功の要因としては、広告、ランディングページ、動画といった多面的な採用コンテンツを配信したこと、1年間結果が出なくても継続したこと、そして自社のイメージが外部からどのように見られているかを調査したことが挙げられます。
参考:採用ブランディングとは?方法やメリット、成功事例、費用相場を解説
伊藤忠商事は、総合商社として日本の経済発展とともに成長を遂げ、「就職ブランドランキング」で4年連続1位を獲得するなど、学生から高い人気を誇ります。
しかし、総合商社という業界特性上、「体育会系」「文系男子」といった固定観念と実態のギャップに課題を感じ、多様な人材を採用するための施策を実施しています。
その一例が、属性の異なる学生が集まる外部イベントへの出展です。イメージとは真逆の「理系女子」など、従来のイメージとは異なる層をターゲットにし、口コミでのイメージ刷新を図っています。
また、インターンシップでは属性が近い先輩社員との対話を重視し、不安を抱える学生に安心感を提供しています。さらに、企業のネガティブ情報も包み隠さず伝え、入社後の活躍を重視した採用を行っています。
参考:TOMORROWGATE「採用ブランディングの成功事例7選|学生人気の高い企業の採用戦略を紹介」
メルカリは、2013年に設立され、日本のオンラインC2C市場をリードする企業として成長し、2018年には東京証券取引所グロース市場に上場しました。
採用ブランディング戦略の一環として、メルカリは「入社後のミスマッチ」を防ぐために、オウンドメディア『mercan(メルカン)』を運営しています。このメディアのコンセプトは「メルカリの『人』を伝える」であり、組織の透明性を高めることをミッションとしています。
『mercan』は、サービスや実績に焦点を当てるのではなく、メルカリで働く人々にスポットライトを当てた記事を配信することで、「メルカリで働く人の姿」を具体的に伝えています。このアプローチにより、『mercan』をきっかけにした求人応募や入社が増え、採用ブランディングの成功事例となっています。
参考:TOMORROWGATE「採用ブランディングの成功事例7選|学生人気の高い企業の採用戦略を紹介」
サイバーエージェントは1998年に藤田晋氏によって設立され、日本のIT業界やエンターテイメント業界で大きな影響力を持つ企業です。インターネット広告、メディア、エンタメなど幅広い分野で事業を展開しており、就活生にとっても非常に人気のある企業です。サイバーエージェントが採用ブランディングにおいて重視しているのは「リサーチ」です。
具体的には、就活生の自社に対する印象や評価をリサーチ会社と連携して大規模に調査し、その結果を採用戦略に反映させています。内定者に対して「どの企業と比較していたか」を聞き出し、競合他社の強みや弱みを分析することで、自社の魅力をより効果的に伝える方法を模索します。
例えば、既に「20代で成長できる環境がある」とのイメージが強いことが分かれば、その点を強調しすぎず、他の魅力を打ち出すなど、リサーチから得たデータを採用広告や説明会、選考プロセスに活用しています。このように、客観的なデータを基に戦略を練ることで、ターゲットの興味を引き、ミスマッチの少ない採用を実現しています。
参考:TOMORROWGATE「採用ブランディングの成功事例7選|学生人気の高い企業の採用戦略を紹介」
集英社は、採用ブランディングにおいて自社が手がけるコンテンツや仕事の魅力をストレートに発信することで注目されています。
例えば、採用サイト「2025年定期採用」では、「推しの子」担当編集者のインタビューや、「メンズノンノ」のトレンドを支えるスタッフの話、さらに「週刊プレイボーイ」編集部の仕事内容などが紹介されています。これにより、実際に携わる仕事の魅力がダイレクトに伝わり、就活生の興味を引きつけています。
集英社のように魅力的なコンテンツを持つ企業が、その魅力を直接伝えることは、採用ブランディングにおいて非常に効果的です。特に、「やりたい仕事」と「できる仕事」のイメージがつきやすい集英社は、ミスマッチを防ぎやすく、採用の成果を上げやすいと言えるでしょう。
参考:TOMORROWGATE「採用ブランディングの成功事例7選|学生人気の高い企業の採用戦略を紹介」
採用ブランディングでは、目的やターゲットを明確にして、どの媒体でどんなブランディングをするかなど、様々な手間や工夫が必要です。日々の業務に追われていると、採用業務を円滑にするための採用ブランディングをすることは難しいです。そこで、採用業務を丸投げできるアウトソーシングがおすすめです。
Crowd Mooveでは、「Crowd Mooveアシスタント」というアウトソーシングサービスを提供しており、バックオフィスを初めとした様々な業務をアウトソーシングできます。また、どんな業務でも一律1時間2,200円でアウトソーシングすることができ、専属PMが一気通貫して担当します。
もちろん採用業務のアウトソーシングが可能で、専門的ノウハウを活用した求人媒体選定から、スカウト、書類選考、面接までをアウトソーシングすることができます。また、数多くの応募にも対応できるオペレーションを設計しています。それにより、委託頂いた企業の仕事を最終面接のみにすることができ、内定後フォローなどの内定承諾率を上げるための業務に集中することができます。
採用工数を減らして、内定を増やしたい企業様はお気軽にご相談ください。
料金 | 一律1時間2,200円 |
対応可能業務 | ・バックオフィス ・人事 ・採用 ・カスタマーサポート ・マーケティング ・営業 |
本記事では、採用ブランディングに適した媒体の活用方法から成功事例について解説しました。
採用ブランディングをすることで、以下のメリットがあります。
採用ブランディングの成功には、企業の特性を活かしつつ、求職者のニーズに応える柔軟な戦略が求められます。これにより、企業は理想的な人材を引き寄せ、競争の激しい市場で優位に立つことができるでしょう。